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ひと・もの・ことをつなぐ。創造性の光をむすぶ。


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ひと・まち・アートを語り合う SCARTS CROSS TALK

札幌にゆかりのあるアーティストや、
文化に関わる活動をされている方を
ゲストに迎えて行う、
札幌市民交流プラザスタッフとの対談。
ゲストの活動の紹介とともに、
札幌の文化芸術活動のいまとこれから、
そして、札幌市民交流プラザに期待される
役割について語ります。

ここから本文です。

1

映画づくりは、挫折装置!?
ワークショップを振り返る。

岩田
SCARTSでは、今年度から「++A&T(通称:プラプラット)」という事業を立ち上げました。これは、毎年「テクノロジー」に関わるテーマを設定した上で、アーティストや研究者とSCARTS、そしてワークショップなどに参加してくれる子どもたちとともに創作する「場」をつくっていくプロジェクトです。今回はそのキックオフとして大通高校と藻岩高校の生徒と一緒に、7月29日~8月1日まで「映画のワンシーンを監督してみよう」というワークショップを行いました。みんな、一本の作品をつくる意気込みで取り組んでくれましたね。
三宅
札幌市民交流プラザを中心に、大通公園と創成川公園という誰もが知っている札幌の街のど真ん中にカメラを持って行って、映画のワンシーンをつくってみる。彼らにとっては普段通り掛かったり、休憩したりする見慣れた場所です。そこで撮影することで、「ここにこんな銅像があったんだ」「川まで降りられるんだ」など、自分の知っている街の知らない顔を発見できたんじゃないかと思います。
岩田
ワークショップを終えてみた感想はいかがですか?
三宅
あっという間!僕自身、これまでも高校生や20代の若者とワークショップをした経験がいくつかあるのですが、いつも感じるのは、高校生ってむちゃくちゃ頭がいいってこと。大人と比べて、頭が柔らかいし体力もある。体力があるってことは、トライ&エラーを何度でも繰り返せるから成長が異常に速い。ワークショップって、端から見ると大人が高校生に何かを教える構図に見えがちですが、今回は僕らが教えるのではなく、彼らの成長速度や頭の回転速度に必死に追いつき、走りすぎないようサポートする時間だった気がします。
岩田
出てきた作品の質とか、いろいろと僕らの予想以上でしたね。あと、日ごとに彼らの顔つきが変わっていった。確実に何かを得た顔になって、素直にすごいなって。
三宅
高校生は思春期であり、ある程度大人でもあり、社会性もある。だから、「普段はこういう自分でいたい」という自意識もあると思うんですね。でも、映画づくりの場という、いつもと違う社会の中に飛び込むことによって、普段のふるまいの殻が一つ破れたんじゃないかな。そういう意味では、デトックス感があったと思います。新しい自分が見えたり、ちょっと緊張していた子も日ごとに違うキャラクターになってきたり。どんどん多面体になっていった気がします。
岩田
三宅監督は札幌出身ですよね。今回、地元で初めての制作・発表となりますが、これについてはどうお考えですか?
三宅
基本的にはプレッシャーです。僕は高校を卒業して札幌を離れました。地元に住んでいた期間と同じくらいの時間を違う街で暮らしているけど、札幌は大切な街には変わりない。そういう立場の人間に何ができるだろうという難しさはありますし、ずっと札幌で活動しているアーティストたちには、どう受け取られるかなとも考えます。いまの立場でやれることを模索し、表現できたらと思います。
岩田
実は、「++A&T」のキックオフは三宅監督にお願いしようと、早い段階から決めていたんです。このプロジェクトは作家を選ぶと思うんですよ。単純に「あなたの作品をこの予算でつくってほしい」というオーダーじゃないから。作品制作の大事な部分を占めるのがワークショップで、それを前提に作品を組み上げなくちゃならない。もちろん作家性は不可欠だし、だからこそワークショップが刺激的なものになるのですが、いろいろとバランスをとれる人じゃないとプロジェクトが成立しないなとは思っていました。三宅監督は全体を見ながらそういうコントロールもできる。この人となら絶対このプロジェクトを一緒にやっていける!と思ったのが三宅監督だったんです。
三宅
コントロールしている気は全然ないんですけど・・・。
岩田
「コントロール」というと言い方が悪いですが、チーム全体の空気をひっぱっていける人だなと思います。それに、人によってはワークショップをやって、その成果をインスタレーションに発展させていくつくり方自体を嫌がる人もいると思う。

三宅
そうですよね。
岩田
ワークショップをすることは、作家として表現することの領域とベクトルが違うと感じる人も、少なからずいると思うんですよね。でも、三宅監督はそれを楽しんでくれそうだし、映画監督という立ち位置の人だから全体が見渡せる。「++A&T」は〈アート×テクノロジー〉がテーマなので、三宅監督のアートとSCARTSのテクノロジーがコラボレーションすることで、面白いことになるんじゃないかなとも思いました。
三宅
サッカーに例えると、今回のプロジェクトって、すごい選手を連れてきて技を見せるようなものではないですよね。札幌で集まったメンバーとチームを組んで試合に挑むってことだと思うんです。全員フォワードのほうが面白いチームになるとか、集まった100人全員をグラウンドに立たせてみるとか、状況を見て調整するのが僕の仕事。今回は集まった高校生たちを決まったフォーメーションに当てはめず、新しいゲームシステムをつくるという役割がとても楽しかったです。この企画、対象を高校生にしたのが絶妙ですよね。
岩田
ありがとうございます。長い目線で教育普及的なことを考えた事業がSCARTSには足りないなと思っていました。そこをスタッフと一緒に強化していきたいと考えていたんです。だから、小さな子どもを対象にするより、まずはある程度大人の感覚も持ち合わせている高校生だと、スタッフと一緒に考えながら動くような「場」がつくれるかなと思いました。
SCARTSに来る高校生は、フリースペースで勉強をしに来る子がほとんどなんです。展示やイベントの鑑賞に来る子ってまだ少ないので、そういう人を増やしたいですね。ここで展示を観たり、ワークショップに参加した子たちが、どんな大人になるか純粋に見てみたいし、彼らがこれから大学生や社会人となるプロセスの中で、SCARTSと関わり合いを持ち、将来的に協働していく相手として育ってほしい。そんな狙いもありました。
三宅
なるほど。僕が、高校生がいいと思った理由は二つ。一つは、自分が最初に映画みたいなものをつくったのが中学3年生だったんです。映画は総合芸術だから、いろんな要素があってなんでもできる。それがめちゃくちゃ面白かった。高校時代も休日は映画を観に行ったり、本屋さんで映画の本を見たり。それが、いまの仕事に通じているんですよね。高校生くらいって将来について本気で考える年齢。そういう時に映画づくりが、将来のきっかけづくりになったらいいですよね。
岩田
そうですね。
三宅
もう一つは、映画のワークショップは集団でつくるものだから、100%個人の願いが叶えられるわけではない。つまり、挫折しないといけない。ものづくりは挫折の連続です。人間関係はもちろん、思い通りにいかないことがたくさんある。その中で、よりよくするにはどうしていくか。一人の力じゃなく、まわりと協力しながら挫折を乗り越えていく時間が映画づくりには明確にあります。それを思いきり体験できるのって、高校生くらいがちょうどいいと思うんです。小学生だとちょっと難しい。今回参加した彼らも100%満足というより、もっとやれたという悔しい気持ちもあるでしょう。それを、今後「こんなことをしたい!」というエネルギーに変えていける年代だと思うんです。
岩田
なるほど。
三宅
ワークショップ前半は、みんなワガママでしたよね。自分のアイデアを映画という目に見える形にしようと取り組むから、意見がぶつかりあっていました。
岩田
こうしたいという考えを、しっかり持った子が多かったですね。
三宅
映画にはユーモアも必要だとわかっているのか、真面目な中にも絶妙に力の抜けた部分を演出してくれていて。すごくクレバーな子たちだと思いましたね。映画づくりという新しい社会の中では、人の新しい側面が見えてくる。4日間を終えて、いい意味で友だちの「知らなかった面」があったんじゃないかな。普段の学校生活の中で相手を知った気になっていたけれど、顔をつき合わせてものをつくるとなると、新しい一面が見えてくる。彼らにとって映画づくりって大きな経験だったと思うけど、同時に友だちの新しい魅力も再発見できたんじゃないかな。
岩田
三宅監督は過去に記録映画も撮っていますが、それを撮ろうと思ったきっかけはなんだったんですか?
三宅
僕にとって映画は元々、アーティストとしてオリジナルの世界観を展開するイメージでした。しかし、実際に映画を撮って感じたのは、自分がカメラを向けていなければ、残らなかったものがたくさんあったということです。
岩田
例えば?
三宅
いまはもうない建物や、赤ちゃんの時の姿。写真もですが、撮ったものが残るのが映像の力。この本質的な力を最大限活用するのが、最近の自分の活動でした。『きみの鳥はうたえる』では100年後、この時代の俳優たちが輝いていた姿や函館の街の風景がいい状態で残ればいいと思いました。今回も同じです。2019年の夏、札幌の高校生たちが自分たちの街でどんなことをしていたか、できるだけいい形で映像に残したい。それこそが映像本来の役割な気がしています。

2

メディアアートは、すぐそばにある。
プロジェクトの、これから。

岩田
これまで、道内外の作家と一緒に作品制作や企画展示などを展開してきましたが、単発のものが多かったんです。でも、アートセンターという性質上、長いスパンでやっていけるプロジェクトも必要なんじゃないかと考えていました。そこに札幌に住んでいる人たちを巻き込んでいかないと、共感を得られないだろうし、お客さんも来ない。限られた人数でも、地元に関わりを持てる形でアウトプットしていきたいなと思いました。
三宅
アートって「よそからやってきたものを見る」という、なんとなくの先入観がありますよね。特にメディアアートなんて、自分とは全然関係のないものに感じると思う。でも、昔は限られた人しかできなかったインターネットが誰でもできるものになったのと同じように、手元にスマートフォンがある今こそ、メディアアートはすごく身近なんじゃないかと僕は考えています。
岩田
「++A&T」の〈アート×テクノロジー〉というテーマは、なじみのない人は敬遠しがちな言葉ですよね。三宅監督が言ったように、みんなが持っているスマートフォンって最新のテクノロジーだということを、ちゃんと伝えたいという狙いはありました。今回、高校生たちはタブレットというテクノロジーの結晶を片手に作品をつくっているし、三宅監督は全部スマートフォンで撮っている。いまやカメラを使わなくても充分なクオリティーをもった画が撮れてしまうって、すごいことですよね。
三宅
だからこそ、何を撮るかが重要になってくるよね、誰でもできるから。SNSを使えば、誰もが自分の撮ったものを発表できるいま、多くの「いいね」は集まらないかもしれないけれど、たった一人が「いいね」を押してくれるようなものが大切になってくるんじゃないかな。
岩田
〈アート×テクノロジー〉をテーマにした上で、いろんなところに手をかけていきたいと思っています。今回が「映画とテクノロジーとアート」で、次の乙女電芸部※は「電子工作」。今度は12~18歳を対象にしたワークショップを9月に行って、1月には展覧会をつくります。
三宅
何をつくるんですか?
岩田
乙女電芸部といろいろ話し合いながら進めているのですが、いま時点で出てきているお題は「ものづくり連歌」です。普段、「ちょっとツラいな」と感じている事やものが、少しの工夫で楽しくなるような装置をつくりたいと思っています。例えば、雪が降ってきたら自動的に傘が開くような仕組みとかですね。

※乙女電芸部
2010年に慶應義塾大学湘南
藤沢キャンパスで結成したDIYグループ。
手芸と電子工作を組み合わせた
「テクノ手芸」をベースにさまざまな作品を
制作。「++A&T」では9月23日に
「展覧会『札幌の冬を考える展』をつくろう!」の
ワークショップを開催。参加した中高生と
ともに1月8日から始まる展覧会をつくりあげる

3

展示する作品への思い、狙い。
高校生、参加者に期待すること。

岩田
作品展示は11月28日から※。札幌に雪が降り始める頃、ここにある一日の夏の公園が現れる予定です。映像と音による空想上の公園。皆さんには、寒くなってきたから夏の公園に行こうか、公園でぼんやりしようか、という気軽な気持ちでSCARTSに来てほしいと思います。リラックスして楽しんでもらえる作品になりそうです。
三宅
12月にはまたワークショップもやりますしね。
岩田
今回参加してくれた高校生がファシリテーターとして、教えたり、サポートしたりする立場に回ってくれるといいなと思っています。声をかけてみたら、やりたいと言ってくれた子もいました。彼らがファシリテーターとなって、また映画のワンシーンをつくってみようというワークショップになると思います。
三宅
僕が今年初めに函館で行ったワークショップに参加してくれた方が、今回の札幌ではファシリテーターとして参加してくれました。そうやってつながりが生まれることもありますからね。
岩田
僕の狙いは「鑑賞する側の目線」にもあります。ワークショップを体験する前と後では、確実に作品の見え方が変わってきます。それを鑑賞者となる人たちに経験してもらいたくて、展示期間中にワークショップを開催することにしたんです。
三宅
なんでもそうだけど、経験があるとないとじゃ、そのもの自体への見方がかなり違いますよね。
岩田
11月29日にはシアターキノで、三宅監督の過去2作品の上映とトークショーを行うイベントも予定しています。今回参加してくれた高校生たちも参加してほしいですね。スクリーンで三宅監督の作品を全編通して観てみるって、勉強になると思うんです。
三宅
ぜひ、皆さんに来てほしいですね。
岩田
あとは来年3月21日に2019年の「++A&T」を振り返る会も行う予定です。「++A&T」は、作家はもちろん、地元の人たちを中心に、いろんな人が関わるプロジェクトです。その人たちを一堂に集めて、どこが良かったか、悪かったかを話し合えたらいいなと。そうすることで、次につながっていくと思うんです。さらに来年度は何をしていくか、その先はどうしていくかっていう話もあわせてできるといいですね。これからの方向性などを言いあえる場をつくるって、結構重要なことだと思うんです。あと、作家と、ワークショップ参加者や関わってくれた人たち、それに主催団体である僕らSCARTSのスタッフが同じ場で自由に話し合う機会というのは、実際にはなかなかないので、新鮮で面白いと思います。
三宅
ドキドキしますね。
岩田
作家からこのプロジェクトの足りない点や気付いた点をあげてもらって、それをパブリックに話し合える場を持ちたい。例えば展覧会だと会場で仕込みをして、作家が作品を設置して、最後ばらして帰る。それで終わってしまう。もちろん、主催者側にとって来場者アンケートとかは今後の参考にはなるんですけど、そうじゃない形でログを残したい。
三宅
誰でもウエルカム。いろんな人に来てほしいですね。
岩田
展示を見てくれた人、体感してくれた人に来てもらって、その時どう思ったかを拾い上げられる場にできたらいいなと思っています。聞き手と話し手って感覚ではなくて、座談会的な感じでお話しできたらいいですね。

今回のワークショップ
「映画のワンシーンを監督してみよう」の
成果発表展示。 11/28~12/15の予定。