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2021年2月2日(火)

札幌文化芸術交流センター SCARTS

「西2丁目地下歩道映像制作プロジェクト」の委嘱作家にアピチャッポン・ウィーラセタクン氏が決定!作品制作が進んでいます。

アピチャッポン・ウィーラセタクン氏

photograph by Chai Siris


「西2丁目地下歩道映像制作プロジェクト」は、さっぽろ地下街オーロラタウンと札幌市民交流プラザをつなぐ “西2丁目地下歩道” を舞台にした映像制作のプロジェクトです。通路上に4つのプロジェクターを設置しており、高さ約2メートル、幅約12メートルの超横長のスクリーンを構成しています。
本プロジェクトでは毎年1~2組の作家に依頼し、この特殊なスクリーンと、日常的に様々な人が行き交う歩行空間という特殊性を活かした作品制作を行っています。この場所のための実験的で多様な作品が、年々増えていく予定で、現在は3作品を上映中です。
2020年度の委嘱作家は、世界的に活躍する映画監督のアピチャッポン・ウィーラセタクン氏。4月1日からは、アピチャッポン・ウィーラセタクン氏による映像作品がラインナップに加わります。氏がこの場所のために手がける作品がどのようなものになるのか、どうぞご期待ください。
西2丁目地下歩道映像制作プロジェクト

作品についてのコメント


「憧れの地(英題:The Longing Field)」

ロックダウンの数カ月間、私は友人でもある俳優たちを訪ねたいという強い衝動に駆られた。この特異な期間、俳優らがどうしてるのかを記録してみたかった。東北では、ジェンジラーがアメリカ人の夫のためにマスクを縫っていた。彼女は夫と一緒に暮らし、在宅で介護している。近くの街では、パティパーンが演奏会場を自作していた。彼はタイの伝統的な歌を唄う。南下すると、バンロップが有機野菜の畑を拡張していた。彼の畑は海の近くだ。

最後にバンコクだが、その地ではサクダーだけを訪ねた。彼は街の片隅で暮らす不法入国者に食料を配布している。社会的距離が叫ばれる中、この国では若者の軍事政権に対する反発が、前例がない規模の抗議活動へと発展した。私はバンコクで、その活動を追いかけ、数時間分の素材に撮りためた。街の通りは、不満と希望に満ち溢れていた。そんな若者たちによる熱を帯びた演説とは対照的に、それまで私の2020年は、だいたい自宅で静かにしていた。

木々が新たな葉を茂らせた。飼い犬が病気になり、その治療をした。バナナが熟し、マフィンにした。そんな移ろいの中、私の不眠症は改善していた。快眠できるようになり、長い夢をみるようになった。自分自身が夢で探求している、とも知った。たいてい夢と現実は双方が近づくまで影響しあうのではないか、と思った。吸引とでも呼ぼうか。起きている時、私は近所だけど今までに訪れたことがないような場所まで歩いたり、車で行ってみた。朝には、夢をメモすることもあった。昼には、山々や滝、地元の温泉を撮影したこともあった。

西二丁目地下歩道映像制作プロジェクトを構想する段階で、2001年に初めて札幌に滞在した時に出会った友人たちの写真を見てみた。タイで私が仲間を訪ねた時と同じ感情が、札幌の友達らに対しても広がった。そこで、友情の証として、ビデオレターをつくることにした。それは、私の2020年を伝えるビデオになる。植物、光、季節が移ろう香り、大勢の若者が発する活力、命が消えゆく哀愁、新たな春への動きを、ここに共有したい。

行ったり、来たりと巡りゆくものが、私に感謝の念を与えてくれた。ここに送る光の手紙が、大陸をまたいでも、私の憧れや愛情を共有する一助となることを願ってやまない。

2021年1月29日、チェンマイにて
アピチャッポン・ウィーラセタクン



アピチャッポン・ウィーラセタクン


1970年タイ・バンコクに生まれ、タイ東北部イサーン地方、コーンケンで育つ。コーンケン大学で建築を学んだ後、シカゴ美術館付属シカゴ美術大学で映画制作修士を取得。1993年に短編映画、ショート・ヴィデオの制作を開始し、2000年に初の長編映画を制作。1999年に「Kick the Machine Films」を設立。既存の映画システムに属さず、実験的でインディペンデントな映画制作を行っている。長編映画『ブンミおじさんの森』で2010年カンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)受賞。映画監督として活躍する一方、1998年以降、現代美術作家として映像インスタレーションを中心に旺盛な活動を行っている。2009年の大規模な映像インスタレーション「プリミティブ」は、ドイツ・ミュンヘンのハウス・デア・クンストにはじまり、数多くの美術館を巡回。2012年にタイの写真家・美術家のチャイ・シリと協働でドクメンタ13に出展、2013年に参加したシャルジャ・ビエンナーレではチャイ・シリとの協働作品が金賞を受賞。同年に福岡アジア文化賞を受賞している。2015 年には初の上映パフォーマンス作品《フィーバー・ルーム》を韓国・光州のアジアン・アート・シアターで発表し、各都市で公演が続いている。  
札幌との関わりとしては、2001 年に札幌アーティスト・イン・レジデンス実行委員会(現・NPO 法人S-AIR)の招聘により、札幌にて人生初の滞在制作を行っている。2021 年4 月、西2丁目地下歩道映像制作プロジェクト(札幌文化芸術交流センター SCARTS)にて、新作を発表予定。地下通路という公共空間にて上映される今作は、自身初のパブリックアート作品となる。

「西2丁目地下歩道映像制作プロジェクト」の委嘱作家にアピチャッポン・ウィーラセタクン氏が決定!作品制作が進んでいます。イメージ画像1 西2丁目地下歩道映像制作プロジェクトプレスリリース