本日は開館日です
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株式会社かんごぷらす
代表取締役社長
中田 亜由美さん
「看護の力で、100歳になっても自分らしく生きられる社会を」との想いを胸に「株式会社かんごぷらす」を起業し、超高齢社会が抱える課題に挑む中田亜由美さん。
事業の種となる研究者時代から創業期、現在至るまで、その時その時に必要な知識や情報を得る過程で、図書・情報館の本を活用していただいています。
― まずは事業内容について教えてください。
現在メインで行っている事業は「おでかけぷらす×まちの保健室」という地域包括ケアの実証プロジェクトです。健康的で自分らしい生活を送るための「からだ」と「こころ」の健康づくりをサポートする「まちの保健室」と、行きたい場所に行きたいときに出かけられる楽しみを提供する「おでかけぷらす」の実証実験で、市内各地に拠点を作って高齢者の社会的孤立の解消につなげるといった取り組みです。
また、来年の2月にはイオン手稲店とも協力して、高齢者だけではなく、介護者、子育て中の方、ビジネスパーソンなど、幅広い方をターゲットとして健康について気軽に相談できる看護カフェのような窓口を実験的に設置する予定です。
― どのようなきっかけで創業されたのでしょうか?
看護師として病院で働いていましたが、ひとりひとりの患者さんに寄り添う時間が足りず、訪問看護師を目指しました。ですが、訪問看護師は利用者の利用時間が限られており、じっくりお話をしたくても次の患者さんのところに行かなければならないことが多くありました。その後、研究者になり要支援要介護の訪問看護を受けている高齢者の方の実態調査を行い、1人では外出できない、会いたい人にも会えない、元気だった時のような楽しみの外出ができない。(家で)死ぬのを待つしかないと泣きながら語る姿をみて、これはなんとかしないとと思い、創業に至りました。
― 起業にあたってどのようなサービスを活用されましたか?
ノーステック財団主催の、研究者が研究を事業化するというセミナーを聞いて、研究者として起業する方法もあるんだと思いました。そこから、STARTUP HOKKAIDOやさっぽろ産業振興財団の「起業道場」に参加し起業に関しての知識を得ました。そこで相談窓口があることを知り、創業後に融資の相談で日本政策金融公庫の窓口に相談に行くこともありました。
創業に関しては既に札幌中小企業支援センターやさっぽろ産業振興財団と繋がっていたので図書・情報館の相談窓口に足を運んだことは無いのですが、図書・情報館では法テラスの窓口なども開設しているので、友人や家族に紹介したりしています。
起業に関しては、図書・情報館は本を読んで勉強するという形でお世話になることが多かったですね。
★図書・情報館の無料相談窓口
図書・情報館内でも専門機関による「無料相談窓口」を開設しています。
・日本政策金融公庫…起業前の資金調達など
・青年司法書士会…会社の設立・登記など
・北海道よろず支援拠点…ビジネスモデルの相談や創業後の事業改善など
・法テラス…暮らしのトラブルなど
― どのような本を利用されたのでしょうか?
図書・情報館は開館当初からよく利用していたのですが、その時々によって必要な情報が変わっていったので、それに合わせて読む本も変化していきました。
『人口減少×デザイン』『「ウェルビーイングなまち」を育てるプロモーション』『日本一わかりやすい地方創世の教科書』など、まちと経済に関する本、『集まる場所が必要だ』『コミュニティカフェ』『ケアするまちのデザイン』『人生100年時代の都市デザイン』など、コミュニティデザインやユニバーサルデザイン関連の本にも目を通しました。雑誌『TURNS』も参考にした記憶があります。
特に『集まる場所が必要だ』は、私自身のバイブルとなる1冊と言えるほど参考になった本です。

集まる場所が必要だ――孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学
出版社:英治出版 / 著:エリック・クリネンバーグ / 訳:藤原朝子
1995年シカゴの熱波では、社会的インフラの有無が生死を分けました。本書は図書館や学校、公園など「開かれた場」が孤立を防ぎ、暮らしを守る力を示し、社会的インフラの重要性を解き明かす一冊です。
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『0円起業』『スモールビジネスの教科書』『ストーリーでわかる起業家のためのリスク』など基本的なものや、WORK-466の『ビジネスモデル2.0図鑑』『ゼロからつくるビジネスモデル』も参考にしました。会社の株運用にあたっては、WORK-476の「金持ち父さん貧乏父さん」シリーズにも目を通しました。
また、創業に悩んでいた時期やコロナ禍で身動きが取れないときに後押しをしてくれたのはWORK-460~461「ビジネススキル」の棚です。特にキャリアプランニング、マネジメント(D.カーネギーの著書『人を動かす』他)、副業の本などが大きな支えになりました。
図書・情報館にもありますが『起業のエクイティ・ファイナンス』は自分でも購入し、とても参考になる一冊でした。
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医療情報の取り扱いについても勉強中なので、WORK-431のスマート医療やヘルスデータサイエンス関連、WORK-437「ヘルスケアビジネス」の棚では『フェムテック』『働く女性のヘルスケアガイド』なども参考にしています。
あとは、個人的にすごく好きな棚があって。WORK-459の思考法の棚です。本の情報をヒントにビジネスのアイデアを思いつくことも少なくありません。以前2階入口で行われていた福祉系の本の特設展示でも、こんな本があるんだなと勉強になりましたし、そういった本との出会いを通してたくさんのインスピレーションが生まれましたね。
大学図書館では基本的な本はそろっていますが、数が多くて選べないことが多く、図書・情報館に来ればいい本が厳選されているのでとても使いやすいです。「あそこ(図書・情報館)に行ったら最新のいい書籍が必ずあるからリサーチに行く」という感じです。
▼中田さんが活用した本棚一覧 (一部)

※現在の所蔵状況については蔵書検索・予約システム
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※WORKのテーマ一覧はこちら、配架図はこちらからご確認ください(PDF)。
― 図書・情報館の魅力を教えてください
開館当初から知っていて興味があって立ち寄ったのが最初ですが、図書館の概念がびっくりするくらい変わりました。どの本を読んでみても興味のある内容の本ばかりで、行けばなにか必ず新しい情報を手に入れることができるところだと思います。他のコワーキングスペースに行くこともあるのですが図書・情報館の雰囲気がとても好きですね。ちょっと本を探して、ちょっと仕事をしてというのが気軽にできる。中心部に近いので打ち合わせの合間にふらっと立ち寄ったり、サードプレイスのような感じになっています。

― 最後に、今後の目標を教えてください。
創業のきっかけが、身体が不自由になって楽しみがなくなり泣いている人の姿を見たことだったので、もう誰ひとり泣く人をつくりたくない、年をとってもどんな身体の状況になっても、自分らしく生きられる社会を企業や地域と協力して創っていけるように全力で取り組みたいと思っています。
事業概要
株式会社かんごぷらす

掲載日:令和7年12月24日