本文へスキップします。

メニュー

    • 文字サイズ
  • English
    • facebook
    • twitter
    • instagram
    • youtube

札幌文化芸術交流センター SCARTS札幌文化芸術交流センター SCARTSスマートフォンサイト

ひと・もの・ことをつなぐ。創造性の光をむすぶ。


札幌文化芸術交流センター SCARTSスマートフォンサイト メニューを閉じる

ここから本文です。


西2丁目地下歩道映像制作
プロジェクト


アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』
Apichatpong Weerasethakul "The Longing Field"
2021 | 9’00” (loop)

アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ1

闇や光、夢や記憶が現実と重なる白昼夢のような作品で知られるタイ出身の映画監督・アピチャッポン・ウィーラセタクンによる映像作品。2020年、新型コロナウイルス感染症拡大に伴いロックダウンしたタイで過ごした静かな日々や、移ろう季節、首都バンコクで目にした若者たちによる抗議デモの様子が、まばたきのように交差する。作家の過ごしたコロナ禍の特異な時間を記録し、かつて滞在した札幌の友人たちへ宛てたビデオレター。

A film by Thai director Apichatpong Weerasethakul, known for his daydream-like works in which darkness, light, dreams, and memories overlap with reality. Of the film, he writes “The peaceful days I spent in Thailand in 2020 when the country was locked down due to the spread of COVID-19; the change of seasons and the days I saw young people demonstrating in Bangkok, the capital city, intersect in the blink of an eye. This film is a video letter to my friends in Sapporo, where I once stayed, documenting my unique time during the coronavirus disaster.”

アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ2 アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ3 アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ4 アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ5

制作クレジット

アーティスト:
アピチャッポン・ウィーラセタクン
コーディネート:
トモ・スズキ・ジャパン
制作管理:
S-AIR
製作:
札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市芸術文化財団)

Credit

Artist: Apichatpong Weerasethakul
Coordinated by Tomo Suzuki Japan. Ltd.
Supervised by S-AIR
Produced by SCARTS

監督の言葉

ロックダウンの数カ月間、私は友人でもある俳優たちを訪ねたいという強い衝動に駆られた。この特異な期間、俳優らがどうしてるのかを記録してみたかった。東北では、ジェンジラーがアメリカ人の夫のためにマスクを縫っていた。彼女は夫と一緒に暮らし、在宅で介護している。近くの街では、パティパーンが演奏会場を自作していた。彼はタイの伝統的な歌を唄う。南下すると、バンロップが有機野菜の畑を拡張していた。彼の畑は海の近くだ。

最後にバンコクだが、その地ではサクダーだけを訪ねた。彼は街の片隅で暮らす不法入国者に食料を配布している。社会的距離が叫ばれる中、この国では若者の軍事政権に対する反発が、前例がない規模の抗議活動へと発展した。私はバンコクで、その活動を追いかけ、数時間分の素材に撮りためた。街の通りは、不満と希望に満ち溢れていた。そんな若者たちによる熱を帯びた演説とは対照的に、それまで私の2020年は、だいたい自宅で静かにしていた。

木々が新たな葉を茂らせた。飼い犬が病気になり、その治療をした。バナナが熟し、マフィンにした。そんな移ろいの中、私の不眠症は改善していた。快眠できるようになり、長い夢をみるようになった。自分自身が夢で探求している、とも知った。たいてい夢と現実は双方が近づくまで影響しあうのではないか、と思った。吸引とでも呼ぼうか。起きている時、私は近所だけど今までに訪れたことがないような場所まで歩いたり、車で行ってみた。朝には、夢をメモすることもあった。昼には、山々や滝、地元の温泉を撮影したこともあった。

西二丁目地下歩道映像制作プロジェクトを構想する段階で、2001年に初めて札幌に滞在した時に出会った友人たちの写真を見てみた。タイで私が仲間を訪ねた時と同じ感情が、札幌の友達らに対しても広がった。そこで、友情の証として、ビデオレターをつくることにした。それは、私の2020年を伝えるビデオになる。植物、光、季節が移ろう香り、大勢の若者が発する活力、命が消えゆく哀愁、新たな春への動きを、ここに共有したい。

行ったり、来たりと巡りゆくものが、私に感謝の念を与えてくれた。ここに送る光の手紙が、大陸をまたいでも、私の憧れや愛情を共有する一助となることを願ってやまない。

2021年1月29日、チェンマイにて
アピチャッポン・ウィーラセタクン

Artist’s Statement on The Longing Field

During the lock-down months, I had a strong urge to visit my actor friends. I wanted to document their lives in this unique time. In the northeast, Jenjira was sewing masks for a living besides taking care of her American husband. In a nearby city, Patipan was constructing a space for his traditional performance gigs. Down south, Banlop was expanding his organic vegetable farm near the sea.

In the end, I could only visit Sakda in Bangkok. He was distributing food for illegal immigrants around the hidden corners of the city. Despite the social distancing, the country saw the unprecedented protests launched by young people against the military dictatorship. In Bangkok, I followed the movement and amassed hours of footage. The streets were full of discontent and hope. Despite these sparks of energy through the months of 2020, my time was mostly filled with silence at home.

The trees sprouted new leaves, the dogs got sick and then cured, the bananas ripen and turned into muffins. Amidst the changes, my insomnia had been improved. I started to sleep better and have longer dreams. I found myself exploring these night visions, most of which, I assumed, were influenced by the time when we could be close to one another. They were aspirations. In my awaken time, I began to walk or drive to places nearby that I hadn’t previously thought of visiting. Sometimes in the mornings, I jotted down my dreams, and by day I shot the mountains, the waterfall, and the local hot spring.

As I was thinking of the video for Sapporo, I saw images of friends from the first time I visited the city in 2001. They shared the same space as those I yearned to meet here in Thailand. I decided to make a video as a letter of friendship, a visual message that conveys my 2020. I want to share the greens, the lights, the smells of the passing seasons, the vitality of the thousands of youths, the sorrow of a life passing, and the torrents of fresh spring.

These cycles of arrival and departure had filled me with gratitude. I hope this letter of light will carry my longing and fondness of our shared time across the continent.

Apichatpong Weerasethakul Chiang Mai, 29 January 2021

プロフィール

アピチャッポン・ウィーラセタクン

1970年タイ・バンコクに生まれ、タイ東北部イサーン地方、コーンケンで育つ。コーンケン大学で建築を学んだ後、シカゴ美術館付属シカゴ美術大学で映画制作修士を取得。1993年に短編映画、ショート・ヴィデオの制作を開始し、2000年に初の長編映画を制作。1999年に「Kick the Machine Films」を設立。既存の映画システムに属さず、実験的でインディペンデントな映画制作を行っている。長編映画『ブンミおじさんの森』で2010年カンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)受賞。映画監督として活躍する一方、現代美術作家としても映像インスタレーションを中心に旺盛な活動を行っている。2013年に福岡アジア文化賞を受賞。札幌との関わりとしては、2001 年に札幌を拠点に活動する NPO 法人 S-AIR の招聘により、札幌にて人生初の滞在制作を行っている。

関連記事

アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ6 アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ7 アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ8 アピチャッポン・ウィーラセタクン『憧れの地』イメージ9

photo : Kenzo Kosuge

西2丁目地下歩道映像制作プロジェクト