2016年新国立劇場公演より ©寺司正彦

妖艶に舞ったサロメが
求めたものは・・・
官能と倒錯の衝撃作!

新国立劇場オペラリヒャルト・シュトラウス「サロメ」

新約聖書の挿話をもとにしたオスカー・ワイルドの戯曲を、
リヒャルト・シュトラウスの作曲でオペラ化。
退廃的、官能的な表現が繰り広げられる衝撃作「サロメ」が、
hitaruで上演されます。
北海道にゆかりのある4人の出演者に、
作品の見どころと公演への思いを聞きました。

2016年新国立劇場公演より ©寺司正彦
2016年新国立劇場公演より ©寺司正彦

story

紀元30年ごろ、ユダヤの領主ヘロデの宮殿。宴会を抜けたヘロデの義理の娘サロメは、庭の古井戸の中に捕らわれている預言者ヨハナーンの声に興味を持ち、上へ連れ出すよう衛兵隊長ナラボートに命じます。サロメの色香に心を奪われたナラボートは禁を犯して、ヨハナーンを連れ出しますが、ヨハナーンはサロメの母・ヘロディアスの近親婚の罪をとがめるばかりで、サロメの誘いには目もくれません。

2016年新国立劇場公演より ©寺司正彦

サロメがくちづけを求めると、呪われよ、と言い捨て井戸の底へと戻っていきました。一方、好色なヘロデ王は、サロメに褒美をやるから踊るよう求め、いら立つヘロディアスをよそに、サロメは官能的な「七つのベールの踊り」を披露します。踊りを終えてサロメが要求した褒美は、ヨハナーンの首。恍惚感にあふれた表情でヨハナーンの生首に接吻をするサロメを見て、恐れおののいたヘロデ王は兵士たちにサロメを殺すよう命じます――。

2016年新国立劇場公演より ©寺司正彦

interview

鈴木 准

◎ナラボート(テノール)
弘前市生まれ、札幌市育ち。北星学園大学卒業。東京藝術大学大学院にて音楽博士学位取得。特にモーツァルト『魔笛』タミーノを得意とし新国立劇場、東京二期会、日生劇場、兵庫県立芸術文化センターなどに出演。B.ブリテン『カーリュー・リヴァー』狂女はロンドン、オーフォード、東京、横須賀で高い評価を得た。

ナラボートは、サロメの魔性を示す重要な役柄

ついに! hitaruでオペラを歌う夢が叶いました。私が演じるナラボートは、このオペラの第一声を歌います。その言葉と想いでサロメという人物の第一印象を形作る大切な役です。彼はサロメにどう関わり、サロメはどう応えるのか? リヒャルト・シュトラウスの音楽により、彼女は魔性の片鱗を見せはじめ、ナラボートの彼女への態度も変化していくのです。hitaruで、「生」の声と楽器が空間を震わせる舞台の素晴らしさを体感してください。

interview

金子慧一

◎2人の兵士1(バス)
札幌市出身。東京音楽大学卒業。2021年二期会『タンホイザー』ラインマル、二期会『魔笛』武士Ⅱ、2022年オーチャードホール『椿姫』グランヴィル医師などに出演。次代を担う本格派のバスとして大きな期待が寄せられている。

聴衆の皆さまに、どう受け入れられるか楽しみ

hitaruという劇場ができ、そこで新しく文化が成長していくのは素晴らしいこと。聴衆の皆さまの耳も肥えていると思われ、そういった意味で少しの緊張を覚えつつ、またどう受け入れられるのか楽しみでもあります。「サロメ」はリヒャルト・シュトラウスの官能的な音楽や新約聖書を下敷きにしたストーリーなど、語ることのたくさんあるオペラですが、オスカー・ワイルドの戯曲を原作とする世紀末芸術の一部ということで、クリムトの絵画など同時代的な芸術作品をイメージすると、より楽しめるのではないでしょうか。「一幕による劇」と名付けられたこの作品を、ぜひ劇場に足を運んでお楽しみください。

interview

大塚博章

◎2人の兵士2(バス)
岩見沢市出身。玉川大学芸術学科音楽専攻卒業。第42回日伊声楽コンコルソ3位。文化庁派遣芸術家在外研修員としてドイツに留学。びわ湖ホール『シチリアの晩鐘』、二期会『魔笛』ザラストロ、『ばらの騎士』オックス男爵などに出演。

美しくスリリングな音楽が、心を揺さぶり離さない

リヒャルト・シュトラウスのオペラ作品は、演奏する者としてはとても難しいものです。歌手にとって譜読みも暗譜も難しく、完璧に覚えても演奏するたびに合わせるのが難しい。きっと指揮者もオーケストラもそう感じていると思います。でも、だからこそ美しくスリリングで迫力のある音楽が、我々の心を揺さぶりつつ離さないのです。リヒャルト・シュトラウスによる「サロメ」の迫力と妖艶さ、不気味さと出会うのは、きっとショッキングな体験になると思います。臨場感あふれるエファーディング氏の演出は、音が出た瞬間から幕切れまで、きっと皆さまの心を離さないでしょう。

interview

大久保光哉

◎カッパドキア人(バリトン)
白糠町出身。東京藝術大学大学院修了。オペラ研修所第10期修了。文化庁派遣芸術家在外研修員としてスウェーデンに留学。『セビリアの理髪師』バルトロでデビュー。『リゴレット』『ドン・ジョヴァンニ』『ラ・ボエーム』などに出演。

背徳的で官能的な世界を昇華させたオペラ

「サロメ」は聖書を題材とするオペラですが、戯曲化したオスカー・ワイルドの世界感、そして白と黒だけで表現されたビアズリーの挿絵の背徳的で官能的な世界を、リヒャルト・シュトラウスが音楽として昇華している点が聴きどころです。ぶつかる音と音、得も言われぬ和声、クリムトに代表される世紀末から20世紀初頭のウィーン分離派の美術を彷彿させる雰囲気。ユダヤ人、ナザレ人、そして私が演じるカッパドキア人とさまざまな民族や出自の人が登場しますが、それぞれの役柄が預言者ヨハナーンにどのように対峙するか、注目していただきたいと思います。サロメ独特の「美」の世界を、ぜひhitaruで感じてください。

2016年新国立劇場公演より ©寺司正彦

新国立劇場オペラ
リヒャルト・シュトラウス
「サロメ」

全1幕/ドイツ語上演/日本語字幕付
管弦楽:札幌交響楽団

2023年6月11日[日]・13日[火]
札幌文化芸術劇場 hitaru
6/11[日] 開場13:00 開演14:00 6/13[火]開場18:00 開演19:00

全席指定 税込
S席16,000円、A席14,000円、B席10,000円、
C席8,000円、D席5,000円、
U25席各種2,000円引き〈S席を除く〉

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2016年新国立劇場公演より ©寺司正彦