©松生 紘子

「hitaru オペラプロジェクト」の第1回公演として2023年2月26日・28日に上演された「フィガロの結婚」。2021年2月のプレ公演「蝶々夫人」に続き、美術を担当した松生紘子氏に制作エピソードを聞きました。

松生紘子
Hiroko Matsuo

劇団四季に在籍後、ロンドンを拠点に活動し、グラインドボーンフェスティバル、ウェルシュナショナルオペラでアシスタントデザイナーを務める。帰国後の主なオペラ参加作品は「魔弾の射手」(菅尾友演出)、「蝶々夫人」(岩田達宗演出)、「ランメルモールのルチア」(田尾下哲演出)、「ZEN」(三浦安浩演出)、「リゴレット」(太田麻衣子演出)。土屋茂昭氏に師事。第44回伊藤熹朔賞奨励賞、第1回伊藤熹朔記念賞本賞受賞。

松生氏制作による舞台の模型

―今回の美術制作にあたり、どのようなことを意識されましたか?
演出コンセプトが「北国のフィガロ」ということで、広い空と大地を表現するため、劇場の高さ、奥行きはもちろん、横幅も最大限舞台空間として使うことに。北国の方々が見るので、寒さを感じる、ピンとはりつめた澄んだ空気感が嘘にならないようにすることを意識しました。
―制作で難しかったことは何ですか?
今回の鍵になるアイテムは、ポプラと黄金の馬車。ポプラの木を見慣れている北海道のお客さまに、どう美しく説得力ある木を作れるかは大きな課題でした。最終的には、高さ13mもある半立体のポプラが出来上がりましたが、そこに至るまで札幌のスタッフと一緒に試行錯誤を繰り返しました。黄金の馬車も課題は山積みでしたが、粘土で作った200個くらいのオーナメントを一つひとつバランスを見ながら貼り付けて、仕上げました。
―美術制作・舞台づくりで印象的なエピソードがあればお聞かせください。
ポプラの木をどう表現するか可能性を探っている時に、「いっそ、外に生えている本物のポプラを立てるのはどうですか」と提案しましたが、それは実現しませんでした。でも、それ以上に美しさに特化した素敵なポプラを札幌の方々が作ってくださったので、感謝の気持ちでいっぱいです。
―札幌文化芸術劇場 hitaruの印象と、北海道、札幌の印象をお聞かせください。
以前「蝶々夫人」で初日を終えて帰京する際、「海外のオペラハウスで仕事したあとのような感覚だな」と思ったことを強く覚えています。今回の「フィガロ」では、本番の1年半前くらいにデザインを提出していますが、長い創作スケジュールが組まれ、時間をかけて丁寧にものづくりに取り組む環境は、国内でもトップクラスだと思っています。

©松生 紘子

©kenzo kosuge

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hitaru オペラプロジェクト
「フィガロの結婚」

[視聴料]各公演2,000円
札幌文化芸術劇場 hitaruで開催の2023年2月26日・28日公演
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