シュトゥットガルト州立歌劇場公演より ©Matthias Baus

シュトゥットガルト州立歌劇場公演より ©Matthias Baus

札幌市民交流プラザ開館5周年事業
2023グランドオペラフェスティバル in Japan
シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演

東京二期会オペラ

オペラ全5幕(イタリア語5幕版)日本語字幕付原語(イタリア語)《新制作》

text 高野麻衣(作家・音楽ジャーナリスト)

シュトゥットガルト州立歌劇場公演より ©Matthias Baus

シュトゥットガルト州立歌劇場公演より ©Matthias Baus

愛に生き、憎しみや絶望に支配され、愚かだとわかっていても足掻き続ける人間たちの物語―それこそがオペラ。大航海時代、七つの海を制した大国スペインの宮廷を舞台に、許されざる恋に翻弄される人々を描く『ドン・カルロ』もまた、ありのままの人間賛歌を描き続けた作曲家、ヴェルディの最高傑作です。
「オペラの世界はフィクションでしょう?」と侮るなかれ。無敵艦隊を率いた覇王フィリッポ2世も王子カルロも実在の人物。エリザベッタの結婚相手がカルロからフィリッポ2世に変わったことも、父王に反逆したカルロが23歳で没したことも歴史的事実で、なんとエリザベッタは、カルロの死の数カ月後に亡くなっているのです。
事件の裏に、悲しきドラマを夢想するのは人間の業でしょう。政略結婚に引き裂かれた恋人たちの悲恋と、大国を統べる王の孤独。政治と宗教。革命と友情。錯綜するテーマをドラマティックに描き上げたシラーの戯曲を、ヴェルディは重厚なグランドオペラへと昇華させました。
荘厳な音楽は、登場人物の内面を描き出しサスペンスフル。カルロ、エリザベッタ、フィリッポ2世、それぞれの想いが痛切に胸に迫ります。創作されたキーパーソン、親友ロドリーゴの熱い友情や、誇り高き悪女エボリ公女の存在も、美しい歌声と共に心に刻み込まれるでしょう。

シュトゥットガルト州立歌劇場公演より ©Matthias Baus

本作は、東京二期会・シュトゥットガルト州立歌劇場・札幌市民交流プラザの提携公演。札幌市民交流プラザ開館5周年事業の一環であり、「プラザフェスティバル2023」の目玉の一つでもあります。
指揮を務めるのは、1990年イタリア生まれの新鋭レオナルド・シーニ。2021年、東京二期会『ファルスタッフ』での日本デビューでは、本作同様東京フィルを率いて絶賛されました。そして演出は、日本初登場のロッテ・デ・ベア。奇才コンヴィチュニーの下で研鑽を積み、ウィーン・フォルクスオーパー芸術監督に就任。「オペラの新時代」を象徴する注目の女性演出家です。
キャストは東京二期会から、ヴェルディオペラのエキスパートがダブルキャストで集結。バス歌手ジョン・ハオや妻屋秀和の本領が発揮されるフィリッポ2世の〈一人寂しく眠ろう〉はもちろん、カルロとロドリーゴの〈友情の二重唱〉やエボリ公女の〈呪わしき美貌〉、悲しい運命を受け入れるエリザベッタの〈世のむなしさを知る神〉など、珠玉のアリアが堪能できるはずです。
ヴェルディの音楽から浮かび上がるのは、大きな時代のうねりと自分自身の狭間で苦悩する、普遍的な「人間」の姿。演出家デ・ベアは、そこに私たちの近未来を重ね「世界が悪い方に向かわないよう、皆で考えられたら」と語ります。
爆発するような情熱も、身を切るような悲しみも、音楽とともに噛みしめ、未来へつなぐ―。ヴェルディの人間賛歌のメッセージは、今を生きる私たちへの贈り物なのかもしれません。

シュトゥットガルト州立歌劇場公演より ©Matthias Baus

story

16世紀のスペイン。王子ドン・カルロは、婚約者であるフランスの王女エリザベッタと恋に落ちる。しかし講和条約により、エリザベッタはカルロの父王フィリッポ2世と結婚。絶望したカルロは父に反逆。親友ロドリーゴと共に、新教徒プロテスタントが迫害されている、フランドルの救済を目指す。
カルロをひそかに愛していたエボリ公女は、カルロの心を乱すエリザベッタに激しく嫉妬し、策を弄する。フィリッポ2世もまた、王妃から愛されていないことを察し、孤独を嘆いていた。旧教カトリックの大審問官に息子の処遇を相談したフィリッポ2世に、反逆者カルロの死罪が言い渡される。ロドリーゴはカルロの身代わりになり親友の命を救おうとするが、暗殺で落命。カルロの解放を求めた民衆たちの暴動の最中、改心したエボリはカルロを牢から逃がす。再会したカルロとエリザベッタが「天国で会おう」と誓い合うと、偉大な先王である祖父の亡霊が出現。カルロを安息の地へと連れ去っていくのだった。

シュトゥットガルト州立歌劇場公演より ©Matthias Baus

札幌市民交流プラザ開館5周年事業
2023グランドオペラフェスティバル in Japan
シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演

東京二期会オペラ
ジュゼッペ・ヴェルディ
『ドン・カルロ』

オペラ全5幕(イタリア語5幕版)
日本語字幕付原語(イタリア語)《新制作》

指揮:レオナルド・シーニ
演出:ロッテ・デ・ベア
合唱:二期会合唱団 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

2023年10月7日[土]・8日[日]
札幌文化芸術劇場 hitaru
各日 開場13:00 開演14:00
上演予定時間:約4時間20分(休憩含む)

全席指定税込
S席16,000円、 A席14,000円、 B席10,000円、
C席8,000円、 D席5,000円
U25席各種2,000円引き〈S席を除く〉

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