
北海道教育大学岩見沢校によるコンサートのテーマは「退廃の烙印をおされた作曲家たち」。
出演する5人に、演奏曲の背景や練習への取り組みなどについて伺いました。
戦時下に弾圧された作曲家の作品と音楽史をひもとく
北海道教育大学岩見沢校では、札幌市民交流プラザ1階のSCARTSコートを会場に「大学連携コンサート」を例年開催しています。
今年のテーマは「退廃の烙印をおされた作曲家たち」。政治体制や社会情勢の影響を受けて、厳しく弾圧された作曲家たちの作品と生涯に焦点を当てたプログラムを披露します。
ナチス・ドイツは第二次世界大戦中、前衛音楽や民族音楽、ジャズの影響を受けた作品やユダヤ人作曲家が手掛けた作品などを「退廃音楽」として排斥し、その過程で数多くのアーティストが国外への脱出を余儀なくされました。この演奏会は、そんな音楽史の一側面について、理解を深めるカリキュラムとしての役割を担っています。
今年は、学内オーディションで選出されたメゾソプラノ(声楽)、フルート、ピアノの奏者がステージに立ちます。「SCARTSコートという素晴らしい会場で演奏できることを、心より感謝しています。良い演奏をお届けできるように、作曲家の生涯や背景も掘り下げた上で、しっかり練習を重ねて頑張りますので、ぜひお越しください」と、出演者を代表して征矢春音氏が意気込みを語ってくれました。


ベーラ・バルトーク作曲
ルーマニア民族舞曲
演奏:征矢春音(フルート)/永瀧陽菜(ピアノ)
バルトークはナチスの圧力に抗議して退廃音楽を自称し、アメリカに移住した作曲家です。この曲はバルトークが1915年に作曲した組曲で、ルーマニアの各地に伝わる民謡がベースになっています。フルートで演奏されるケースはそれほど多くありませんが、それぞれの曲の特色をうまく表現できればと思っています。(征矢)
計6曲で構成された組曲ですが、それぞれの曲調は個性的で、踊りのための音楽の楽しさが詰まっています。ルーマニア地方に伝わる民謡編曲ならではの魅力を二人で解釈しながら、本番に向けて練習していきたいと思います。(永瀧)

ベーラ・バルトーク作曲
ピアノソナタSz.80 第1,3楽章
演奏:中山美南(ピアノ)
民俗音楽の研究家としても知られるバルトーク作曲のこのピアノソナタは、打楽器のような強いタッチと民俗音楽の影響を感じさせるリズムが特徴で、そこに魅力を感じて、今回の演奏曲に選びました。聴きどころは、今にも踊り出したくなるような軽快なリズムのフィナーレです。ぜひ会場で楽しんでください。


ハンス・アイスラー作曲
ドイツのミゼラーレ
ひとりのコールガールの歌
クルト・ヴァイル作曲『三文オペラ』より
メッキーメッサーのモリタート
セックスの虜のバラード
海賊ジェニー
演奏:鈴木萌々夏(メゾソプラノ)/鈴木沙英(ピアノ)
アイスラーとヴァイルは、共にナチス政権下で退廃音楽のレッテルを貼られたドイツの作曲家です。アイスラーの曲は希望と反骨、体制に抗う精神を強く訴えかけてきます。また、ヴァイルの『三文オペラ』では、一般的な声楽とは異なる実声での歌唱に挑戦します。一つの演劇の舞台として表現しようと考えていますので、ぜひ会場で耳を傾けていただければ幸いです。(鈴木萌)
オペラの多くはオーケストラ形式で上演されますが、今回はピアノ伴奏用に編曲された楽譜を用います。オペラの授業では、楽譜をよく理解し、歌い手の息づかいや動きをよく観察して、それに合わせて伴奏するということを学んできました。オーケストラのようなスケールの大きな演奏を目指して練習中ですので、オペラの世界をどうぞお楽しみください。(鈴木沙)

アルバン・ベルク作曲
ピアノ・ソナタ ロ短調Op.1
演奏:永瀧陽菜(ピアノ)
「十二音技法」を考案したシェーンベルク師事のもと作曲されたこの曲は、最後まで調性が確立しない無調音楽ならではの神秘的な響きをたたえています。それゆえにベルクの音楽は、ナチス・ドイツから退廃音楽のレッテルを貼られることに。以前から演奏したいと願っていたすてきな楽曲ですので、ぜひ良い演奏をお届けしたいと思います。

大学連携コンサート
北海道教育大学岩見沢校
退廃の烙印をおされた作曲家たち
2025 8.19[火]・20[水] SCARTSコート(札幌市民交流プラザ1階)
19日[火]19:00開演(18:30開場)、20日[水]14:00開演(13:30開場)
[ナビゲーター]
19日[火]段木涼太、20日[水]福永裕梨
(HTB北海道テレビ放送アナウンサー)