
Program
「ドン・キホーテ」より抜粋
「ボレロ」(モーリス・ベジャール振付)
「ロミオとジュリエット」
(モーリス・ベジャール振付)よりパ・ド・ドゥ
「ディアナとアクテオン」よりパ・ド・ドゥ
鬼才モーリス・ベジャールの
最高傑作「ボレロ」
モーリス・ベジャール(1927~2007)は、フランス・マルセイユ生まれのバレエの振付家。世界のバレエシーンに大胆な革新をもたらし、多くのファンに愛されたこの天才振付家の代表作とも言えるのが、モーリス・ラヴェル作曲の「ボレロ」でしょう。
ラヴェルが手掛けたこの曲は、当初から「踊られること」を想定して作曲されました。ゆえに多くの振付家が「ボレロ」に取り組んできましたが、真紅の円形舞台の上で舞う主役“メロディ”と、それを取り囲む男性ダンサーたち“リズム”というシンプルな座組を採用したベジャールの「ボレロ」は、1961年の初演以来、数多くの観客を魅了しつづけています。
印象深い2つの旋律を繰り返しながら、爆発的なクライマックスに向けて、踊りのテンションを徐々に高めていく構成は、ダンサーの可能性と表現力を究極的に引き出す、モダンバレエの真髄とも言える魅力にあふれています。
またベジャール版「ボレロ」は、女性でも男性でも“メロディ”役を務めることができるのが特徴。ただしベジャールが生きていた時にはベジャール自身が、亡き後はモーリス・ベジャール財団が許可したダンサーしか踊ることを許されず、世界的にもその人数は決して多くありません。
日本では、東京バレエ団だけがベジャール版「ボレロ」の上演を許可され、上野水香、柄本弾の2名が、“メロディ”として踊ることを許されています。



上野水香
Mizuka Ueno
2004年プリンシパルとして入団。「ドン・キホーテ」「ボレロ」など大役を射止め、以後も「眠れる森の美女」「白鳥の湖」「海賊」「ラ・バヤデール」等の古典全幕に主演。ベルリン、ニューヨーク、ボローニャ、フィレンツェ、チリ、モスクワなど世界各地のガラ公演に招かれ出演を重ねる。長身で柔軟な身体を生かした華麗な踊りでスターのオーラを放つ。
——上野さんの代名詞的な作品でもある「ボレロ」は、札幌のファンが待ち望んだ演目でもあります。まずは、モーリス・ベジャール版「ボレロ」の魅力や見どころを教えてください。
ベジャール振付の「ボレロ」は、誰もが知るモーリス・ラヴェルの名曲に合わせて踊る素晴らしい芸術作品です。あの音楽に踊りを付けるなら、この振付と演出がベストだと私は思っています。どんな方でも、前知識がなくても、必ず惹き付けられ、引き込まれるはず。とてもエネルギッシュで、ある意味スピリチュアルとも言える世界観ですが、見てくださった皆さまからは、「生きる力が湧いた」といった声をたくさんいただいてきました。ぜひ一度、あの世界を体験してほしいと思います。
——上野さんは、ベジャール版「ボレロ」の主役である“メロディ”を踊ることを許された、国内唯一のプリマとして知られています。名作「ボレロ」と向き合う日々の中で、作品に対する思いや取り組みは、どのように変化してきましたか?
国際的にも名高い名作であり、数々の偉大なダンサーが踊ってきた作品ですから、踊れることになった時、最初はとても緊張しました。すごく踊りたかったけれど、とんでもなくハードルが高い作品でもあります。また、ただ踊るだけではなく、そこに大きな意義や感動を生み出すことが、実はとても難しいんですね。
そして何度も踊り、経験を重ねてきて、思い描いていた「ボレロ」の世界を少しずつ体現できるようになってくると、最初はただ怖かったあのテーブルの上は、まるで自分だけの限りなく自由で崇高な世界に思えてきました。
まだまだ踊り込むことで、この作品のさらに奥をのぞいてみたい――そう思わせてくれる、魅力あふれる私のライフワーク的レパートリーであり、東京バレエ団に長く在籍しているからこそ踊れて、これからももっと踊っていきたいと思える、一番の原動力となっている作品です。

——5歳の頃からバレエに打ち込み、世界を舞台に活躍されてきた上野さんですが、バレエダンサーを志したきっかけやモチベーションについて教えてください。
きっかけはローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップ賞をいただいたこと。若手ダンサーの登竜門的なコンクールですから、私に将来性があると国際的に評価されたということで、自信と指南を得ることできました。
それからもずっと、幸せな時も苦しい時も、私に寄り添ってくれるバレエですが、何よりも原動力となっているのは、ファンの皆さま、見に来てくださるお客さまの応援、そして喜んでくださるお気持ちです。
私が踊ることで、皆さまに幸せを与えることができていると感じる時、私はさらに踊りつづけることができます。皆さまと感じる「幸せの連鎖」がこの上なく好きなのです。

——2023年12月のhitaruバレエプロジェクト「くるみ割り人形」にご出演いただきましたが、なじみのある札幌、そして劇場での公演となります。改めて、本公演に向けた意気込みをお聞かせください。
この劇場には、オープンの時からお世話になっています。私にとって、とても大切な劇場の一つで、たくさんのすてきな思い出があります。「くるみ割り人形」にも出演できて、本当に幸せでした!
それに、北海道が大好きです。ここでバレエに取り組む方々は、とても強い情熱とエネルギーをもってバレエを推進されていて、心から尊敬しています。
東京バレエ団の〈HOPE JAPAN〉という舞台で一度「ボレロ」を踊りましたが、その時から「またここで『ボレロ』を踊れたらいいな」と願ってきました。当日は心と魂を込めて踊らせていただきます。皆さまにお会いできるのを楽しみにしています。


東京バレエ団
hitaru Special Gala
2025 9.26[金]
18:30開演〈17:45開場〉
予定上演時間 約2時間10分(休憩含む)
札幌文化芸術劇場 hitaru
S席11,000円/A席8,000円/B席6,000円/
C席4,000円/D席3,000円/
サウンドハグ付きS席12,000円/
シニア割(65歳以上)/U25/障がい者割引:各席種2,000円引


本公演では、S席一部エリアにて「サウンドハグ」を導入しています。
「SOUND HUG」(サウンドハグ)* は、抱きかかえるタイプのまったく新しい球体型デバイス。内蔵する振動スピーカーで楽曲全体や特定の楽器の音をMIXして再生し、その振動を触覚で感じ取ることができます。また、楽曲に合わせて発光するため、曲の旋律を視覚でも捉えることが可能です。耳の自由・不自由にかかわらず、単に耳で感じるだけではない、新たな音楽体験を提供します。
*「SOUND HUG」は、ピクシーダストテクノロジーズ社の商標です。